原始感覚について
 西丸震哉氏が命がけの秘境探検で培った野生の感覚。
それは本来誰もが赤子の頃には持っていた感覚であり、
生命が大地とともに生きていく為の叡智として備わっ
ているものです。その叡智を人々は利便的な生活に囲
まれていくうちに忘れてしまっている。本展覧会を通
して、様々な化学物質に囲まれて生きる現代人が、生
き残るための危機察知能力を高め、日常とよばれる生
活のなかに潜む、かけがえのない美しさに気づくこと。
今を生きる私たちが、自然とともに生きていく術を、
身をもって体験することのできる気づきとしての展覧
会です。
縄文≠パプア・ニューギニア
 西丸震哉氏の主要な探検地パプア・ニューギニアの
高地人の生活は、縄文中期の生活に相当します。その
縄文中期、約5000年前の縄文遺跡が西丸震哉記念館
の隣接地で野外アート作品制作中に偶然発掘されまし
た。運命的な符合とともに、西丸震哉氏と縄文人を惹
きつけた木崎湖畔において原始感覚をキーワードに美
術展を開催します。
縄文世界と原始感覚
 地中から掘り出された縄文土器片と石器群を水で洗
い、泥の中から現れる縄文の形に心躍らせながら、何
に使ったものだろう?と、空想にふけりながら何度も
握っていると、手にしっくりと収まる個所がありまし
た。私たち現代人にとってただの石ころのように見え
る石たちは実は、すべて無限に変化する道具であると
いう直感が生まれた時、縄文と呼ばれている世界の姿
がはっきりと息づき始めていました。
湖が海になる土地
 木崎湖畔に暮らす米農家の方が厳しい冬を越え、湖
畔端の田んぼに水が張られると、そこはまるで海のよ
うになると言いました。海ノ口という地名にもあるよ
うに、古代人も湖を海と考えていたのでしょう。湖が
そのまま田園へとつづく木崎湖畔の景色は、稲作発祥
の原風景に近い懐かしさを感じさせる土地です。稲尾
の無人駅に降り立ち、目の前に広がる田園と湖、山並
みがつくりだす風景を眺めた時、どこか懐かしい気持
ちが湧きあがってくるのではないでしょ

生活の「花」としての美術

 大地とともに農業を営む木崎湖畔の人々にとって、
美しい湖畔の風景は身近なものです。大地と向かい
合う厳しい生活と日々移ろいゆく湖畔の美しさに囲
まれた日常に、一輪の花を生けるようにして、新し
い文化の風が吹き、一刻の花が咲く。そのような、
文化の花を愉しみ、大切にすることが、真に豊かな
生活というものではないでしょうか。
水の言語、大地の声
 圧倒的なアルプスの大自然に抱かれる大町。稲尾集落の懐かしさ
を感じさせる湖畔の田園風景。木崎湖畔の美しい水の地としての空
間が現代の原始感覚保持者たるアーティストにどのようなインスピ
レーションを与え、水の言語のような繊細な大地の震える声をどの
ような原始言語としての美術表現に昇華し、発信していくことがで
きるのか。その水の言語-大地の声は、この地に住む人、この地を
訪れる人に新たな文化の産声を呼び起こさせることでしょう。
開催概要
名称 「湖畔の原始感覚美術展」
主催 原始感覚美術展実行委員会
アートディレクター 杉原信幸
共催 西丸震哉記念館
助成 財団法人朝日新聞文化財団
後援 大町市大町市教育委員会安曇野アートライン推進協議会、大町博物館連絡会
    abn長野朝日放送、朝日新聞長野総局、信濃毎日新聞社、大糸タイムス社
協賛 ゆーぷる木崎湖
協力 虹の家、山本晃司、麻倉プロジェクト、大町映像文化財を残す会、わちがい創舎
    海ノ口キャンプ場、木崎湖キャンプ場、心身障害者福祉作業所「時計台」
    社会福祉法人いたるセンター、 Yショップニシ、インドカレー屋青空屋台のおうち
    グリナ―ズビレッジ、北ヤマト園、NPO地域づくり工房、高瀬木材株式会社
写真提供 山本晃司、舘友希江、手塚愛子
参加作家

西丸震哉 (食生態学者、探検家、エッセイスト、画家、音楽家、ゲスト参加)

杉原信幸 (美術家、西丸震哉記念館アートディレクター)

淺井裕介 (泥絵を制作するアーティスト、福岡アジア美術トリエンナーレ等展覧会多数に参加)

新田学 (陶芸作家、空土(からっと)として「水と土の芸術祭」に参加)

本郷毅史 (水源域を撮る写真家、アフリカの喜望峰から日本まで自転車で3年5ヶ月間旅する)

山形淑華 (詩人の吉増剛造に学ぶ。大野一雄フェスティバル2007、2008に参加)

黒田将行 (アーティスト、Art space元我堂を運営)

雪雄子 (舞踏家、大駱駝艦の旗揚げに紅一点参加、三内丸山縄文大祭で踊る。ゲスト参加)

鈴木寅二啓之 (美術家、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ参加、ゲスト参加)

青島左門 (石彫、インスタレーション、アーティスト)

長井一馬 (彫金家、長野県工芸展長野県知事賞、北澤美術館賞受賞、大町在住)

麻倉プロジェクト・山上渡 (岡本太郎芸術賞特別賞受賞、大町に8Link studioを運営、アーティスト)

蓮沼昌宏 (東京芸術大学美術解剖学博士課程修了、アーティスト)+虹の家

平林昇 (陶芸家、安曇野在住) + 稲尾の農家

吉増剛造 (詩人、写真家、映像作家、紫綬褒章受章、毎日芸術賞受賞など、ゲスト参加)

草間彌生 (コレクション参加)

田口ランディ (小説家、縄文友の会会長、ゲスト参加)

田中基 (縄文研究家、多摩美術大学非常勤講師、ゲスト参加)

タテタカコ (歌手、飯田在住、ゲスト参加)

槙野文平  (白洲正子に認められ、正子椅子を作った大町在住の木工家、ゲスト参加) 

心身障害者福祉作業所「時計台」

社会福祉法人いたるセンター


  助成:財団法人朝日新聞文化財団
後援:大町市、大町市教育委員会、安曇野アートライン推進協議会、大町博物館連絡会
朝日新聞長野総局、信濃毎日新聞社、abn長野朝日放送、大糸タイムス社
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